「今回こそサブ4を出せる」と思いながら、また4時間を超えてしまった——。
そんな経験を何度も繰り返すうちに、「いったい何が違うんだろう?」という疑問が頭から離れなくなりました。
感覚では答えが出ないなら、データに聞いてみよう。そう思い立ち、2013年からランキーパーに記録してきた1,302件のランニングデータを引っ張り出して、徹底的に分析してみることにしました。
この記事では、9回のフルマラソンを走ってきた中で「サブ4を達成できた年」と「できなかった年」の練習内容を比較した結果をお伝えします。同じように壁にぶつかっているランナーの方に、少しでも参考にしていただければ嬉しいです。
9回のフルマラソン、達成はたった2回
2013年からランキーパーに記録をつけ続けてきました。これまでのランニングデータは1,302件。フルマラソンの完走は9回にのぼります。
その記録を並べると、こうなります。
| レース日 | タイム | 結果 |
|---|---|---|
| 2017年2月19日 | 5:38:51 | ❌ 未達成 |
| 2019年2月17日 | 4:17:25 | ❌ 未達成 |
| 2023年2月19日 | 3:53:33 | ✅ サブ4達成 |
| 2023年3月19日 | 3:53:23 | ✅ サブ4達成 |
| 2024年3月3日 | 4:02:42 | ❌ 未達成 |
| 2024年3月24日 | 4:04:16 | ❌ 未達成 |
| 2025年2月16日 | 4:01:46 | ❌ 未達成 |
| 2025年10月26日 | 4:56:49 | ❌ 未達成 |
| 2026年2月15日 | 4:18:38 | ❌ 未達成 |
サブ4を達成できたのは、2023年の2レースだけ。しかもどちらも3時間53分台という好タイムでした。その前後のレースでは4時間を超え続けています。
「2023年、あのときは何が違ったのか」。過去のデータを引っ張り出して、徹底的に比較してみました。
なお2017年は週平均15.9kmと練習量が明らかに不足しており、5時間38分という結果はそのまま準備不足の反映です。「同程度の練習を積んだのになぜ達成できないのか」という今回の分析の核心とは別の話になるため、以降の比較分析からは除外しています。
分析方法について
今回の分析に使ったのは、ランキーパーからエクスポートした CSVファイル。2013年から2026年4月までの全ランニング記録は1,286件ありますが、今回の達成・未達成の比較に実際に使ったのは各レース前6ヶ月の練習データ(2017年を除く8レース分・計502件)です。
一般的なフルマラソンのトレーニングプランが16〜24週(約4〜6ヶ月)であることを参考に、各レースの「前6ヶ月間(約26週間)」を分析期間として設定しました。以下の指標で比較しています。
- 週平均走行距離(km)・週平均ラン回数
- 距離帯別の練習回数(〜10km/10〜15km/15〜20km/20km以上)
- ペース帯別の練習回数・走行時間
- 月別走行距離の推移
レース本番の記録(42km以上)は集計から除外し、あくまで「練習」の中身だけを見ています。
サブ4を達成した2023年、前6ヶ月の練習
2023年2月19日(3:53:33)レース前6ヶ月
分析期間:2022年8月〜2023年2月
この期間のデータを見て、まず目を引いたのは練習密度の高さでした。
- 総ラン回数:80回
- 総走行距離:935.5 km
- 週平均走行距離:36.0 km/週
- 週平均ラン回数:3.1 回/週
- 平均ペース:5分41秒/km
- ロング走(20km以上):17回
月別の走行距離はこうなっています。
| 月 | 回数 | 走行距離 |
|---|---|---|
| 2022年8月 | 5回 | 43.4 km |
| 2022年9月 | 13回 | 122.9 km |
| 2022年10月 | 15回 | 172.3 km |
| 2022年11月 | 12回 | 166.9 km |
| 2022年12月 | 16回 | 189.0 km |
| 2023年1月 | 11回 | 146.8 km |
| 2023年2月(〜レース前) | 8回 | 94.2 km |
8月はウォームアップ的な位置づけで43kmと控えめですが、9月から120km台へ、10月からは一気に170km台へ。11月・12月で170〜190kmの高負荷期を維持し、1月に入ると147kmへ落として身体を整え、2月のレース直前はさらに絞り込んでいます。いわゆる教科書通りの「積み上げ→テーパリング」の形ですね。
特に注目したいのが20km以上のロング走を17回こなしている点です。6ヶ月(約26週間)で17回ということは、3週に2回のペースで20km超を走っていた計算になります。
サブ4を達成できなかった年、前6ヶ月の練習
6回の未達成レース(2017年を除く)との比較
2017年を除いた6レースの前6ヶ月データをまとめると、以下のとおりです。
| レース | 週平均距離 | 週平均回数 | 平均ペース | ロング走20km+ |
|---|---|---|---|---|
| 2019年2月 | 30.9 km | 3.3回 | 5’26″/km | 5回 |
| 2024年3月① | 33.0 km | 2.9回 | 5’56″/km | 8回 |
| 2024年3月② | 32.6 km | 2.8回 | 5’53″/km | 8回 |
| 2025年2月 | 36.5 km | 3.1回 | 5’53″/km | 11回 |
| 2025年10月 | 36.5 km | 3.9回 | 5’56″/km | 4回 |
| 2026年2月 | 44.8 km | 4.2回 | 5’57″/km | 9回 |
2019年:走行距離はあるのに、ロング走が圧倒的に少なかった
週30.9kmというボリュームは一定の水準にありますが、ロング走20km以上がわずか5回。総走行距離802kmのわりにロング走の割合が極端に少なく、距離を細かく積み重ねるスタイルになっていたことがわかります。結果は4時間17分。あと一歩届きませんでした。
2024年・2025年:練習量は達成期並みなのに、なぜ届かない?

2024年・2025年になると、週平均距離は33〜37kmと達成期(36.0km)に近い水準に達しています。練習頻度も週3回以上。なのに結果は4時間00〜04分台でした。
2026年2月のレースにいたっては、6ヶ月合計1,163kmと過去最大の練習量だったにもかかわらず、結果は4時間18分。近年でもっとも遅いタイムでした。
「練習量を増やせばサブ4に近づく」という仮説は、データによって否定されてしまいました。
達成・未達成を分けていたのは「何を」走っていたか
発見①:ロング走(20km以上)の回数が2.3倍違った

2017年を除いた8レースのデータで、達成と未達成をもっともはっきり分けていた指標はロング走(20km以上)の回数でした。
- サブ4達成期(2レースの平均):17.5回
- サブ4未達成期(6レースの平均):7.5回
- その差、約2.3倍
驚いたのは週平均距離です。達成期が35.8km、未達成期が35.7kmとほぼ完全に同じ距離を走っています。週ラン回数も3.0回対3.4回で大差ありません。練習量はほぼ同等なのに、ロング走の回数だけがこれほど大きく違っていたのです。
発見②:未達成期は「10〜15km」で練習を終わらせていた

距離帯ごとの練習回数を比べると、もうひとつ重要な違いが見えてきました。
| 距離帯 | サブ4達成 | 未達成 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| 〜10km未満 | 32.5回 | 34.0回 | ほぼ同じ |
| 10〜15km未満 | 20.0回 | 39.5回 | ⚠️ 未達成が約2倍多い |
| 15〜20km未満 | 8.5回 | 6.5回 | ほぼ同じ |
| 20km以上 | 17.5回 | 7.5回 | ✅ 達成が2.3倍多い |
未達成期は10〜15kmゾーンの練習が、達成期の約2倍あります。
10kmを超えたあたりで「今日はここまで」と切り上げる。その積み重ねが、20km以上の練習を積めない原因になっていたようです。あと5kmを延ばせるかどうかが、長い目で見て大きな差を生んでいました。
発見③:速い練習の回数・時間が約3倍違った

ペース帯別に練習回数と走行時間(6ヶ月平均)を比べると、さらに興味深いパターンが見えてきました。
| ペース帯 | 達成:回数 | 達成:時間 | 達成:構成比 | 未達成:回数 | 未達成:時間 | 未達成:構成比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 〜4’59″(速め) | 15.5回 | 10h28m | 11.7% | 5.2回 | 2h48m | 3.1% |
| 5’00″〜5’29” | 18.0回 | 17h01m | 19.0% | 19.3回 | 17h27m | 19.1% |
| 5’30″〜5’59” | 24.0回 | 29h25m | 32.8% | 29.8回 | 28h58m | 31.7% |
| 6’00″〜6’29″(遅め) | 10.0回 | 12h48m | 14.3% | 21.7回 | 27h11m | 29.7% |
| 6’30″以上 | 11.0回 | 20h00m | 22.3% | 11.5回 | 15h01m | 16.4% |
| 合計 | 78.5回 | 89h44m | — | 87.5回 | 91h27m | — |
回数だけでなく、走行時間で見るとより鮮明です。
達成期は6ヶ月間で「5分/km未満の速い練習」に10時間28分を費やしているのに対し、未達成期はわずか2時間48分。ちょうど約3倍の差があります。
一方「6分〜6分29秒のゆっくり走」は、達成期が12時間48分(全体の14.3%)に対し、未達成期は27時間11分(同29.7%)。未達成期は練習時間の約3割をこの「中途半端なゾーン」で使っていました。
6ヶ月間の総走行時間はほぼ同じ(89時間44分 vs 91時間27分)なのに、その時間の”使い方”がまったく違っていたということです。
達成期の練習は「速い日はしっかり速く、長い日はしっかり長く」というメリハリがあるのに対し、未達成期は「中程度の距離を中程度のペースで」という均一なパターンになっていた——これが今回の分析でもっとも印象的な発見でした。
なぜロング走がサブ4に効くのか
マラソン生理学の観点から言うと、20km以上のロング走には他の練習では代替しにくい効果があります。
まずグリコーゲン枯渇への適応です。人体が貯蔵できるグリコーゲン(糖質エネルギー)は約2時間分と言われており、フルマラソンではほぼ必ずこの「壁」に直面します。ロング走を繰り返すことで、身体は脂質をエネルギー源として使う能力を高め、後半の失速を抑えられるようになっていきます。
次に精神的・筋肉的な耐久力です。30〜35kmを超えたあたりで脚が動かなくなる感覚は、ロング走でしか経験できません。その域まで追い込んだ練習を繰り返していると、レースで同じ局面を迎えたときの粘り方がまるで違ってきます。
細かく距離を積み重ねる練習にも有酸素能力を底上げする効果はあります。ただ「42kmを4時間以内に走りきる」という課題に直接対応するトレーニング刺激は、やはりロング走でしか得られないと感じています。
サブ4を目指すランナーへ:データから見えてきた提案
今回の分析から見えてきた行動指針をまとめます。
① ロング走20km以上を3週に2回のペースで習慣にする
6ヶ月間で17〜18回、つまり3週に2回のペースでロング走をこなすことが、達成期の共通パターンでした。「週末に必ず1本は20km以上」を毎週こなすのはハードルが高くても、「2週に1回以上」を意識するだけで練習の質は大きく変わります。
10kmを走ったあと「もう少し走れそう」と感じたときこそ、そのままペースを落としてでも20kmまで延ばす。その習慣の積み重ねが、長い目で見て大きな差を生んでくれます。
② 月間走行距離の目安は150〜190km
達成期の月間距離は、ピーク時で167〜189km。トップ市民ランナーの水準には届きませんが、サブ4には十分な量だと感じています。2026年2月のように月間244kmまで増やしても結果が出なかったことを考えると、「量より質(ロング走の充実)」を優先した方が合理的です。
③ 練習にメリハリをつける
達成期は「速い練習(5分/km未満)」と「長い練習(20km以上)」の両方が充実していました。6分台でだらだらと中距離を走り続けるより、「今日は短くても速く」「今日は遅くても長く」というメリハリのある組み立ての方が、サブ4に向けた練習としては効果的なようです。
④ レース6ヶ月前からスタートし、直前はしっかり落とす
達成期のパターンは「約26週前に動き出し→3〜4ヶ月前にピーク→直前2ヶ月でテーパリング」でした。6ヶ月前の走行距離が少なくても焦る必要はありません。むしろレース直前にボリュームを抱えたまま突入する方がリスクになります。

まとめ:練習量ではなく、練習の”中身”がサブ4を分けていた
今回の分析を通じて、一番感じたことは「がんばればいいわけじゃない」ということでした。
2026年2月のレースは、最も練習を積んで最も遅かった。この事実がすべてを物語っていると思います。
データが教えてくれたのは、シンプルな答えです。
週の総走行距離は同じでいい。ただ、その中に「20km以上のロング走」と「5分/km以下の速い練習」をしっかり組み込む。それだけで、達成期と未達成期のあいだにある差は埋まるはずです。
1,302件の記録を眺めていると、自分の走りのパターン、得意な時期、失敗の共通点がはっきり見えてきます。「なんとなく走っている」から「データで振り返りながら走る」に変えるだけで、練習の見え方は大きく変わりました。
サブ4を目指している方の参考になれば嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
分析データ:ランキーパー 2013年〜2026年4月(総アクティビティ1,302件・ランニング1,286件、フルマラソン9回)。達成・未達成の比較分析には各レース前6ヶ月の練習データ計502件を使用。
